Friday, 23 October 2020
エリオットと友人たち(4)サム・クームス/Quasi
Wednesday, 21 October 2020
ゲストパフォーマンス (1) Lois / Rougher (1996)
Wednesday, 14 October 2020
Waltz #2 スウェーデンTVインタビュー(1998年)
「シンガーソングライターっていう小さなレッテルを貼られることでうんざりしてしまうのは、そこに過度に感傷的で、歌詞でもって人を操っているというイメージがつきまとうことなんだ。あたかも歌い手がみんな自分と同じように感じさせようとしているかのように。
NYの写真を撮ったとして、ある人はそれを見てすごく気が滅入るとか恐ろしいと思うだろうし、違う人が見ればNYでやれる楽しいことを思い浮かべるというふうに大きな違いがある。僕は歌っていうのはそんなものだと思う。」
Tuesday, 13 October 2020
エリオットとカバーソング (5) When I Paint My Masterpiece, Bob Dylan, The Band
ボブ・ディランについては恥ずかしながら詳しく知らなくて、彼の膨大なカタログの中で、なぜエリオットがこの曲をXOツアー(98年)のセットリストに選んだのだろうかと思っていました。この曲は、ディランのベスト盤(71年)と、以前に彼のバックバンドをしていたザ・バンドが先駆けてリリースしたアルバム『Cahoots』(71年)に収められていています。現在まで沢山のアーティストにカバーされていますが、有名なのはグレイトフルデッドのジェリー・ガルシアのライブでのカバーでしょうか。細野晴臣のカバーも見つけて聞きましたが素晴らしかったです。
ディランの歌詞はこれまで何度か見直されているようなのですが、エリオットが歌っていたのはザ・バンドのバージョンです。NY時代に数か月ぶっ通しで聞いていたのは、ボブ・ディランとザ・バンドの『The Basement Tapes』で、実は『The Last Waltz』もお気に入りだったそうです。
また、近年ディラン自身もまたライブのレパートリーとして歌っているらしく、ニューヨークタイムズのインタビューでもこの曲について語っています。
「この曲は、古典の世界や、手が届かないものに関係していると思う。経験を超えて到達したい場所。あまりに崇高で一流なので、その高みから決して帰ってこられないもの。思いもよらないものを達成したこと。この曲が言おうとしたのはそういうことだ。」
聴く人によって解釈が変わってくるのがこの曲の面白さだと思うのですが、ネット上で見受られるのはアーティストのクリエイティビティについて歌われた曲ではないかという意見。なるほど、私がふと頭に浮かんだのは夏目漱石の『草枕』です(笑)。この小説も歌も本当に色々な味わい方ができるので、私の頭ではもう全然ついていけないくらいなんですけど・・・(汗)
『草枕』でも『マスターピース』でも、語り手である画家は絵を描くために旅に出かける。でも最後まで決して画家は絵は描かないんですよね。その代わりに言葉でもって何枚もの「絵(イメージ)」を意識的に描いている。漱石は、彼の好んだ中国の詩書画のような描写をしたし、ディランが見せてくれるのは、なんだか史実や神話をベースにしたユーモラスなローマや、皮肉めいたブリュッセルの様子。漱石もボブ・ディランももちろん絵を描くことが本業ではないから、作品の中で<絵>を『書く』または『歌う』ことを楽しんでいるようです。
また『マスターピース』では、吟遊詩人(ディラン自身?)が古代と現代の時空を旅をしているように思えます。「Train wheels runnin’ through the back of my memory」、「On a plane ride so bumpy that I almost cried」の部分はなんだかタイムマシンに乗ってるみたいです。様々な困難の後で語り手が願うのは、「everything is gonna be smooth like a rhapsody」。現代で使われている「rhapsody(狂詩曲)」と、その語源である古代ギリシャの吟誦詩人を指す「Rhapsode(ラプソード)」の二重の意味があるのではと推測します。
「But someday, everything is gonna be different When I paint that masterpiece.」で最後歌は締めくくられますが、傑作というのは長い歳月を経て初めて傑作という評価が得られるわけで、それが揺るがなくなったときに古典として存在し続けることができる。すべてのアーティストが目指す到達点といえるかもしれません。ディランがホメロスの「オデュッセイア」を最も影響を受けた文学の1つとして挙げているのも頷けます。
エリオットが『マスターピース』に関して言及しているインタビューはこれ以上見つからなかったのですが、きっとサウンドの絶妙さと想像力を掻きたてられるような歌詞にニヤッとしたのではないかと。この曲を聴くと、そんな彼の笑顔を私はイメージすることができるのです。
Oh, the streets of Rome are filled with rubble,