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歌詞に興味を持ってから気に入ったのは「Blood on Tracks」と「Highway 61 Revisited」の2枚だそう。
Q:最初に影響されたのは誰ですか?
A:たぶんビートルズ。それからディラン。僕の父が「くよくよするなよ(Don't Think Twice, It's All Right )」の弾き方を教えてくれたんだ。僕はディランの言葉がすごく好きなんだけど、それだけじゃなくて、ディランが言葉に深い興味を抱いているという事実がたまらなく好きなんだ。彼について好きなところはそこだ。時々僕たちは「マスターピース(When I Paint My Masterpiece ) をライブで演奏するよ。(taken from les Inrockuptibles nov. 98?)
ボブ・ディランについては恥ずかしながら詳しく知らなくて、彼の膨大なカタログの中で、なぜエリオットがこの曲をXOツアー(98年)のセットリストに選んだのだろうかと思っていました。この曲は、 ディランのベスト盤(71年)と、以前に彼のバックバンドをしていたザ・バンドが先駆けてリリースしたアルバム『Cahoots 』(71年)に収められていています。 現在まで沢山のアーティストにカバーされていますが、有名なのはグレイトフルデッドのジェリー・ガルシアのライブでのカバーでしょうか。 細野晴臣のカバーも見つけて聞きましたが素晴らしかったです。
ディランの歌詞はこれまで何度か見直されているようなのですが、エリオットが歌っていたのは ザ・バンドのバージョンです。 NY時代に数か月ぶっ通しで聞いていたのは、ボブ・ディランとザ・バンドの『The Basement Tapes 』で、実は『The Last Waltz 』もお気に入りだったそうです。
また、近年ディラン自身もまたライブのレパートリーとして歌っているらしく、ニューヨークタイムズのインタビュー でもこの曲について語っています。
「この曲は、古典の世界や、手が届かないものに関係していると思う。経験を超えて到達したい場所。あまりに崇高で一流なので、その高みから決して帰ってこられないもの。思いもよらないものを達成したこと。この曲が言おうとしたのはそういうことだ。」
聴く人によって解釈が変わってくるのがこの曲の面白さだと思うのですが、ネット上で見受られるのはアーティストのクリエイティビティについて歌われた曲ではないかという意見。なるほど、私がふと頭に浮かんだのは夏目漱石の『草枕』です(笑)。この小説も歌も本当に色々な味わい方ができるので、私の頭ではもう全然ついていけないくらいなんですけど・・・(汗)
『草枕』でも『マスターピース』でも、語り手である画家は絵を描くために旅に出かける。でも最後まで決して画家は絵は描かないんですよね。その代わりに言葉でもって何枚もの「絵(イメージ)」を意識的に描いている。漱石は、彼の好んだ中国の詩書画のような描写をしたし、ディランが見せてくれるのは、なんだか史実や神話をベースにしたユーモラスなローマや、皮肉めいたブリュッセルの様子。漱石もボブ・ディランももちろん絵を描くことが本業ではないから、作品の中で<絵>を『書く』または『歌う』ことを楽しんでいるようです。
また『マスターピース』では、吟遊詩人(ディラン自身?)が古代と現代の時空を旅をしているように思えます。「Train wheels runnin’ through the back of my memory」、「 On a plane ride so bumpy that I almost cried 」の部分はなんだかタイムマシンに乗ってるみたいです。様々な困難の後で語り手が願うのは、「everything is gonna be smooth like a rhapsody 」。現代で使われている「rhapsody(狂詩曲)」と、その語源である古代ギリシャの 吟誦詩人を指す「Rhapsode(ラプソード)」の二重の意味があるのではと推測します。
「 But someday, everything is gonna be different When I paint that masterpiece. 」で最後歌は締めくくられますが、傑作というのは長い歳月を経て初めて傑作という評価が得られるわけで、それが揺るがなくなったときに古典として存在し続けることができる。すべてのアーティストが目指す到達点といえるかもしれません。ディランがホメロスの「オデュッセイア」を最も影響を受けた文学の1つとして挙げているのも頷けます。
エリオットが『マスターピース』に関して言及しているインタビューはこれ以上見つからなかったのですが、きっとサウンドの絶妙さと想像力を掻きたてられるような歌詞にニヤッとしたのではないかと。この曲を聴くと、そんな彼の笑顔を私はイメージすることができるのです。
When I Paint My Masterpiece
マスターピース
Oh, the streets of Rome are filled with rubble,
Ancient footprints are everywhere.
You can almost think that you’re seein’ double
On a cold, dark night on the Spanish Stairs.
Got to hurry on back to my hotel room,
Where I’ve got me a date with pretty little girl from Greece*
She promised she’d be there with me
When I paint my masterpiece.
ああ、ローマの通りは瓦礫だらけ
古代の足跡がそこらじゅうに
二重の眺めのように思えるだろう
寒くて暗い夜のスペイン階段では
急いでホテルの部屋に戻らなくては
ギリシャから来た可愛い子とデートなんだ
僕と一緒にいてくれると約束してくれた
僕が傑作を描くのなら
Oh, the hours we’ve spent inside the coliseum* ,
Dodging lions and wastin’ time.
Oh, those mighty kings of the jungle, I could hardly stand to see ‘em,
Yes, it sure has been a long, hard climb.
Train wheels runnin’ through the back of my memory,
When I ran on the hilltop following a pack of wild geese*.
Someday, everything is gonna be smooth like a rhapsody
When I paint my masterpiece.
ああ、コロッセウムの中で費やした時間よ、
ライオンたちをかわして無駄にした
ああ、あのジャングルの最強の王たちよ、僕は見るに堪えなかった
そう、それは確かに長く険しい登りだった
遠い記憶で列車の車輪が回ってる
野生のガチョウの群れを追って丘の頂上を駆けた時
いつか すべてはラプソディーのようになめらかに
僕が傑作を描くときに
Sailin’ ‘round the world in a dirty gondola.
Oh, to be back in the land of Coca-Cola!
薄汚れたゴンドラで世界を回ってる
ああ、コカ・コーラの地に帰るんだ!
Well I left Rome and landed in Brussels,
On a plane ride so bumpy that I almost cried.
Clergymen in uniform and young girls pullin’ muscles*
Everyone was there to greet me when I stepped inside.
Newspapermen eating candy
Had to be held down by big police.
But someday, everything is gonna be different
When I paint that masterpiece.
ローマを去ってブリュッセルに
飛行機では激しく揺れて泣きそうだった
司祭や肉離れを起こしている若い娘たち
足を踏み入れた時 誰もが私に挨拶をした
キャンディーを舐めている記者たちは
大警察に取り押さえられるべきだった
でもいつの日か 全てが変わっていくだろう
私が傑作を描くときに
with pretty little girl from Greece
ザ・バンドバージョンの歌詞で、ディランバージョンは'with Botticelli's niece'
inside the coliseum Dodging lions
古代ローマの剣闘士を指している?
following a pack of wild geese
ガリア人による侵略の際、ローマを守ったとされる伝説のガチョウを指す?
Clergymen in uniform and young girls pullin’ muscles*
うーん、謎です。何のことかよくわかりません。私はヨーロッパでよく描かれる
絵画のモデルが頭に浮かんだんですが。。。(司祭とか裸体の宗教画とか)
エリオットの曲もクリエイティビティに対して歌われたんじゃないかと思う曲が多々ある感じがします。もしかしてディランからヒントを得ているのかもしれないですね
ReplyDeleteminnminnさん、こんにちは!そうですよね。Tomorrow Tomorrow とか、Son of Samとか、もっと沢山あるかもしれませんね。この曲には音楽の天才たちにしかわからないツボがあるのかもしれませんね。
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