Wednesday 15 August 2018

That Voice



その「声」の出現

エリオット・スミスは大学時代の友人のニール・ガストと一緒に地元ポートランドで結成したバンドHeatmiserで活動中の1994年にデビューソロアルバム「Roman Candle」をリリースします。これは知られている通り、当時のバンドのマネージャーでガールフレンドでもあったJJ ゴンソンが彼女のベースメントで録音されたテープを、地元のレーベルCavity Searchに送ったことによって実現したのですが、これにはエリオット本人も本当に驚いたようです。当時の主流であったグランジ・ロックの真逆を行くようなアコースティックな音楽が受け入れられる場所などどこにもないと思っていたのでしょう。

ソロ・アルバムをリリースした当時のことをJJ ゴンソンはPitchforkの記事でこのように述懐しています。

「私と彼は音楽の趣味が似ていて、何時間も座ってよく弾き語りをしていたわ。私の家の二階で、彼は何時間も何時間も曲を演奏したかと思えば、30分ほどベースメントに行ってテープに録音していたの。「Roman Candle」のサウンドは彼の指のちょうど前に置かれた低品質のマイクで録音したものよ。彼はアコースティックギター用のピックアップさえ持っていなかった。」

「アコースティックな音楽をやることは恥ずかしいことだった。誰一人としてやっていなかったし、皆が皆がさつな感じだった。あの頃ポップな音楽はありえなかった。エリオットと私は、ベッドルームの扉を閉めて誰にも聞かれないようにと願いながらピーター・ポール&マリー、ビートルズ、キャプテン&テニールのカバーをしていたの。エリオットがニールに初めてソロの曲、“No Name #1”のパートを聞かせたときのことは決して忘れないわ。笑われてしまって。それはショックだった。」

また、1998年にイギリス人音楽評論家のBarney Hoskynsがエリオット・スミスにインタビューした際の質問の中で、「君のその独特な、柔らかい歌声はどうやって生まれたの?」という質問に彼はこんな感じで答えています。

「僕は自分のバンド(Heatmiser)で歌う自分の声にうんざりしていたんだ。自分が思うようにバンドでは歌えないことが嫌だった。ライブではいつもすごく大きな声で歌わないといけないのに、自分の声はひどい風邪をひいているみたいなガラガラの奇妙な声で。でも僕はバンドをしているときも含めて十代の頃から一人で4トラックで録音し続けていて、この歌い方のほうが僕にはしっくりしている気がしていたけれど、他の人が気に入るとは思っていなかった。それに当時のアメリカのノースウェストではそんな音楽は「忘れてしまえ」と言わんばかりだった。だから僕は人前でやる勇気がなかったんだ。だけど今はそれを克服して良かったと思っている。自分の好きじゃない音楽をやるのは気が進まなかったから。」


もともと自分は大声で叫ぶ系のロックに向かないと悩んでいたとき、十代の頃から自作曲を宅録をし続けていたことや、ガールフレンドと一緒にアコースティックな歌を演奏をしていく中で彼のスタイルは確立され「Roman Candle」が生まれた。友人たちはその頃の彼はバンドのツアー中であろうと、いつでもギターの練習に没頭していたと証言しています。

Saturday 11 August 2018

エリオット・スミスのソングライティングレッスン!




エリオット・スミスのソングライティングレッスン!

このビデオではエリオット・スミスがソングライティングについて語っています。フィギュア8の頃なので2000年くらいでしょうか。何を言っているのか知りたくなったのですが、ギターを一切弾かない私は、肝心のギターのコードの部分だけは専門的過ぎて何を言っているか全くわかりませんでした。

モザイクみたいな映像のせいもあって、本人はちょっと調子悪そうな印象を受けますが、饒舌とはほど遠いもののすごく簡単な言葉でスパッとクリエイティビティの真髄みたいなものを教えてくれています。

ソングライティングの人生
「僕は日中いろいろなことを空想していて、まあ、ほとんど毎日ギターを弾いたり、音楽を聞いたりしてるんだけど、、、特に決まった作曲方法があるわけじゃないんだ。イマジネーションこそが天から降ってくる力だよ。それを封じ込めたままにせず、現れてきて君をびっくりさせるんだ。」

僕は曲を言語(language)のようには考えないで、もっと形(shape)のようなものとしてとらえているんだ。これについて話すのは面白いことなんだけど、難しい。僕はコードチェンジにすごく関心があって。それは子供のころからすごく好きなことなんだ。だから僕はあんまりリフを思いついたりはしない。たいていは、こんなふうにメロディをほのめかしているようなコードのシークエンスみたいなものを作るんだ」


「いつも既存のコードと格闘することにうんざりしているなら、想像力でもってそれに対抗できる。」

「座ったまま長い間ただギターを弾いているだけでは、あんまり(観客の)注意を引くことはできないよ。いつも自分の指を見ながら自分がプレイしているのを見ながら、ここを押さえて、次はあっちを押さえて、みたいなことをやるんじゃなくて、、、(ギターの運指を見ないで弾く)。ほとんどのコードは普通のコードなんだけど、これはえーとD7みたいなものなんだけど、Eも含まれているんだ。なんていうコードが知らないんだけど。これが好きで。これはD7。」

(このあとの説明がわかりません。ギター小僧がいる掲示板では、エリオットは5thのコードをベースノートとして使ってるとかなんとか。。。知ってる方いませんか?)

なにか曲を弾いてもらえませんか?
(曲を弾いたあとで)
「これがハーフコードだよ。たくさんギターを弾いているもののなかでは、全部の弦の音を鳴らしたくないってこともある。こんな感じで。。。指でここを押さえているから、ここはもう動かない、そしてここもそう。僕が弾いているのはこの音だけで、ほかのものは全部ブロックされている。スリーストリングとか、ハーフコードとかだ。この曲は「クエスチョンマーク」という曲。エレキギターの曲なんだ。」

曲作りを学ぶ人へのアドバイスはある?
「まず、リラックスすること、そして他人が聞きたいものを自分が考えなければいとも簡単にできる。新しいものを見つけながら、音楽において自分が好きなものをブレンダーにかけて何か出てくるかみてみるんだ。そして、それが君が気に入ったものなら、それはいいものであるはず。なぜなら君自身が好きなんだもの!」

「ミリオンセラーのレコードみたいなのが必ずしも正しいなんてことはないよ。誰もそれが好きかどうかはっきりしない何百万枚も売れるレコードっているのがあるけど、誰が作ってるんだろう(微笑)?みんなが聞きたいと思うものに引きずられるんじゃなくて、自分が好きなことをまっとうする少しだけの自信をもつんだ。僕は思うんだけど、自分が好きな音楽をやっている人というのは本当に人を引き付けるんだ、たとえどんなスタートであってもね!」