Thursday 27 August 2020

Big Takeover No.43 1998 Interview / ビッグ テイクオーバー インタビュー(No.43 1998年)

『XO』リリース当時(1998年)のインタビューの翻訳です。長いし、過去のインタビューとも内容がちょっと似ているんですけど、興味がある方はご覧ください。『XO』に収録されている曲のコメントもありますし、ちょっとした人生哲学的な受け答えがいい感じです。

インタビュアー: パメラ・チェリン
ビッグ テイクオーバー No. 43 号より
原文はhttp://www.sweetadeline.net/pamart.html (インタビュー文が始まるくらいから翻訳しています)

PC:あるウェブサイトであなたのインタビューを読んで、それはラジオ局でのものだったんだと思うんだけど、聞き手のDJは、歌を書くことがどういうことなのかあまりわかっていなかったと思うの。歌っていうのは、そもそも作り手が意図したような結果になるとは限らないっていうことがつかめなかったのよね。

エリオット:そうだね。みんなは自分が狙ったようになるって思いがちだけど、必ずしもそうじゃない。僕が歌詞を書いているときは、何かについて考えたり、何を書いているか理解しているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。時々自分さえ何を書いているかわからないときだってあるし!

PC:あなたは新しく作った曲がたくさんあるわよね。だってニューアルバム『XO』が出たもの。あなたはGrand Malと名付けようとしていたって聞いたんだけど、どうして変えたの?

エリオット:実は最初のタイトルは『XO』だったのを変えてたんだ。いかにも『Either/Or』に絡んでる気がして。しかもGrand Malっていう名前のバンドがあって、彼らはバンドと同じ名前のタイトルをつけてほしくなかったし。僕は『XO』のほうが好きだよ。

PC: インターネットの掲示板であなたのファンからの投稿を読むんだけど、「スーパーゴッド」やら、「スーパージーニアス」、「超キュート」までありとあらゆる名前で呼ばれているわよね。ここで取り上げてみるけど、あるファンは「もしエリオットのレコードがなければ、とうの昔に僕はおそらく死んでいたに違いない」って書いてるわ。

エリオット:ああ。そういうのは全然わからないんだ。僕について書かれたことはあまり読まないし。。。他の人が考えてることだからなぁ。僕はただの人間だし、もし彼らが僕を知っていたら、僕も自分たちと同じだとに気づくだろうし。

PC: あなたが超人的存在だって信じたい人もいると思うの。

エリオット:人が有名人に求めるのはそこなんだろうね、でもそれはあまり心地のいいもんじゃない。自分がそうだと思うなんて馬鹿げてる。

PC: 自分たちは他人を凌駕する存在だって思い始めるロックスターが沢山いるわ。彼らは自分自身のパロディと化してしまう。

エリオット:そうなりたくてたまらない人だっているよ。彼らはありのままの自分が好きになれなくて、いっそ自分自身のパロディを演じているほうがいいって。僕はまだいろんな意味で自分自身のことがよくわかっていないけど、自分の人生を想像上のものと引換えにはしないぐらいのことの分別はわきまえているよ。

PC: 近いうちに「1-800エリオットホットライン」みたいのを立ち上げたりはしなさそうね。(エリオット笑)オーケー、ニューアルバムの『XO』についての話をしましょう。あなたは現在メジャーレーベルにいるわよね。あなたの以前の余分なものを削ぎ落したようなソロ音源から「大掛かりな」レコードを作ることに不安はあった?

エリオット:ううん、そもそもドリームワークスは僕がそもそも何をしようとしていたか知らなかったし、僕にプレッシャーをかけるようなことは全くしなかったよ。アコースティックなレコードを作ることだって出来ただろうし、それでも彼らは良かったんだ。実際彼らは自分たちが好きなレコードを作ろうとしているんだと思う。レコード会社はただお金儲けのために沢山レコードを出しているわけだけど、ドリームワークスは僕にはよくしてくれているよ、今のところはね。

PC: 今のところはかぁ!!(二人とも笑)フィンガーピッキングはあなたのトレードマークといっていい演奏スタイルよね。他のシンガー達は、感情を伝えるのに声や歌詞を用いて、コードでそれを支えるわけだけど、あなたはさらなる声としてギターを使っているわ。

エリオット:そうだね、トライするのは楽しいよ。僕はフィンガーピッキングがすごく好きで、フラメンコが大好きなんだ。弾けないんだけど、フラメンコから沢山学んだよ。クリエイティブな演奏の仕方を見つけることは素晴らしいことだ。ふつうはコードをストロークして、それだっていいんだけど。コードストロークで好きな曲も沢山あるよ。でも、僕の指が違うことをしでかしてくれるほうが僕にとってはもっと嬉しいんだ。

PC:あなたは長い間ギターを弾いているから、何か違うことを見つけなきゃいけないのね。(エリオット頷く)新作の中ですぐ目立つ曲は、脳内トリップできそうなロックな曲『Amity』ね。歌詞はあなたの他の曲よりも、より意識が流れているような、とらえどころのないものとして聞こえるわ。

エリオット:すごく無防備な歌だー数分で歌詞をつけて変えなかった。歌詞の感じが気に入ってるんだ、別に深い意味がある歌というわけではないんだけど。

PC: うん、そうじゃないわよね。でも曲の雰囲気が好きよ。私は『パルプ・フィクション』のユマ・サーマンばりに自宅の地下で踊ってたわ。

エリオット:(笑)ただのビッグ・ロック・ソングって感じかなぁ。すごくシンプルなんだ。歌詞自体が大事なんじゃなくて、サウンド全体に重きが置かれているんだ。友達に僕が誰かと恋愛関係になろうとしているみたいな歌に聞こえると言われたけれど、そうじゃない。こういうことなんだ、「君とは一緒にいるとすごく楽しいし、だから僕は君が大好きなんだけど、でも僕は本当に、本当に気が滅入っているんだよ」って。でも、そう聞こえるかどうかわからない。僕が、「Ready to go」って言ったのは、生きるのに疲れたって意味なんだ。

PC:ええっ?!もうこの世からチェックアウトするってこと?

エリオット:これでこの曲を憂鬱なのにしてしまってごめんなさい。(両者笑)

PC: 大丈夫、これからも聞くわ。私もロマンティックな要素がこの曲にはあるって思ってたわ。『Amity』って言葉がフランス語の『Amitie』に置き換えられるのかしら。

エリオット:実は僕の知人のことなんだ。

PC: 私のこの曲の好きなところは、cause you laugh and talk/and ‘cause you make my world rock!”と歌っているところで、今までのあなたの曲作りのスタイルからの新しい変化よね。その屈託のなさがいいわ。ほとんどのソングライターはそういう歌詞を書けないし、表現できないと思うわ。もし他の人が書いたとした、『なんてくだらないの!』と考えたに違いないわ。

エリオット:そうだね(笑)

PC: でもあなたは知的で、あなたの歌詞はものすごく巧みだから、あなたがわざと緊張を緩めて曲を楽しんでいるような気がしたの。

エリオット:すごくシンプルなんだ。僕が言おうとしていたのは、「君のことはすごく好きだし、ハッピーで陽気な人と一緒に遊ぶのは最高だけど、僕はそんな気分になれないし、君とは一緒にいれないよ」っていうことなんだ。

PC: それで、お決まりの「どうしてあなたはそんなに悲しいの?」って言われるのね。

エリオット:問題なのは、別に僕は他の人より悲しくはないってことなんだ。時には幸せだし、ずっと悲しいわけでも、ずっとハッピーなわけでもない。つまり、ほとんどの人は四六時中とてつもなく幸せではないんだ。自分たちなりの心配事があって、立ち向かったり乗り越えようとしている。だから僕はただより良い人間になろうとしているだけだし、実際僕が知っている人はみなそうしようとしている。不幸の目的っていうのは、自分の人生をより良い方向に向けさせることだよ、状況を好転させられるようなね。そうでなければ不幸である意味なんてないし、只々残酷な境遇ってことになるだろう。

PC: 確かにピンチの時ほど多くを学ぶわよね。

エリオット:そうだね、もし毒のある植物を食べたら、具合が悪くなった。だからその植物は食べないことにする、そんな風にね。

PC: それでも、あなたの歌詞は、他の人よりもあなたが過激なほうへ向かうことをを示唆しているようね。例えば『Sweet Adeline』では、『頭のスイッチを切るための鎮静剤を待っている、もしくは死ぬよりはましな状況を』って歌ってるわ。

エリオット:(笑)時々どうしてそういったことを書くのかわからないんだ。みんなと同じように、僕にはあらゆる感情があるけれど、どういうわけか、ハッピーなときには書きづらい。幸せっていうのはより広がっている気持ちだ。幸せじゃないときは、簡単に焦点を合わせて言える、「この事は僕を苛立たせる」ってね。

PC: もしかしたらあなたが憂鬱だと思うことは、人は自分たちの可能性に相応しい生き方が出来ないということ、それはあなたの歌詞に出てくる一つのテーマに思えるわ。XOのBaby Britain』では、「もし君が半分ほど賢ければ、芸術品だっただろう」とあるし、Either/Orの『Between the Bars』では、「ありえそうにもない自分になれる可能性」と歌っているわね。

エリオット:そうだね。僕は誰一人として、自分たちの可能性に沿う生き方は出来ないと思うよ。でもそれはネガティブなことじゃない、僕の歌ではそう聞こえるんだけど。というのは、時々それで僕も疲れ果ててしまうんだ。でも、この世界では自分の可能性を全うすることは不可能だ、何故ならもし出来るのなら、可能性そのものの価値があまりないことになる。人は自分たちが最終的に発揮できることよりもはるかに優れているんだ。

PC: それでセレブリティに憧れるのかもしれないわね。自分たちを過少評価してしまう。

エリオット:そうだよ!人が憂鬱になる原因の一つだよ。

PC: そして抗うつ薬を飲んでしまう。あなたはまだ飲んでいるの?

エリオット:一年前に止めたんだ。

PC: 良かった!私はZoloftを試したけど、大嫌いだった。

エリオット: 僕が試したのはそれだ。僕はまあ気に入ったんだけど。しばらくの間は気分が良くなったし、でもそれから酒を飲み始めて・・・で、それだと上手くミックスしないんだ(両者笑)今はゾロフトも飲んでないし、お酒もあまり飲んでないよ。だからまた気分が良くなってる。

PC: そうだと思っていたわ。なぜならXOは楽観的な要素がもっとあるように思うの。日中や太陽を引き合いに出していることが多いわよね。

エリオット:うん、そう言えるね。

PC: 『Everybody cares, everybody understands』では、私たちがちょうど話していたことーうつになって、ゾロフトを飲んでたことーあなたを助けようとする人たちを歌っているんだけど、彼らはあなたが心の中で何を感じているのかがあまりわからない。

エリオット:ありがとう。かなり手厳しい曲なんだ、「君が何をすべきなのか俺たちが知っている」と思っている人たちについてのね。

PC: 2枚目のセルフタイトルアルバム『Elliott Smith』の姉妹曲『St.Ides Heaven』みたいに聞こえるわ。「なぜなら皆たいそうなプロばかりなんだ 自分たちが知ってる厄介事の答えがわかっているから」と歌ってるところ。

エリオット:そうだね。両方の曲にあるよね、自分たちが似たようなことを体験して、これこれやったら上手くいった、だから必ず君にだって当てはまるはずだとみんな思い込んでるっていうところが。

PC: 「さあおしゃれして出かけようよ!」とか言ってまわりは気分を切り替えようってしてくれるんだけど、それじゃうまくいかないわよね?『Rose Parade』の曲の中の人みたいな気分にさせられるの、「通りがきれいになったとき、僕は一人取り残されたクソだろう」(エリオット笑)あなたの歌は会話みたいなスタイルで、とてもくだけてて直接的よね。あなたは自分の歌詞をもっと歌らしくするために見直したりするの?

エリオット:やるよ。僕にとってより「歌らしい」っていうのは、より話しているような感じだってこと。もし出来るなら、人が実際に話しているように書くことだ。だから、詩的なシンガーやシンガーソングライターとの比較を持ち出されると癪にさわるんだ。僕は言葉を飾ったりしないよ!

PC:あなたは違うわ。でもメタファーや心象表現を使う。

エリオット:僕は歌詞は自分の感情を表現できるものであってほしい。でもそれは話し言葉としての英語のリアリティとも繋がっているときこそクールだと思うんだ、ただのアイディアの集まりみたいなんじゃなくて。

PC: あなたは現実と空想を入り混ぜている。例えば、Bled Whiteでは、リアルな状況でマンハッタンでF線に乗りながら、それから友達の一人と繋がることについて歌っている、そうしてもっと隠喩的なものが出てきて、それらが織り交ざっていくの。メッセージを伝えるのに十分なストーリーを語りつつ、私たちの頭の中で動き出すのに十分な心象イメージを残してくれている。

エリオット:そう言ってくれて本当に嬉しいよ。なぜならそれこそが僕がやろうとしていることなんだ。僕が曲を書くときはそのことに取り組む以外のことはあんまりやってないよ。

PC: ここにパーフェクトな話があるわ。昨日私は『Bled White』を聞きながら地下鉄に乗ってたんだけど、顔を上げたとき、地下鉄の乗っていたのは私一人だけだってことにはっとした。地下鉄は動いてなくて、ドアは閉まってた。そして少なくとも100人の人達が空っぽの地下鉄の車両にいた私を見つめていたの。彼らは私を見つめてあちこち叩いてて、でも私はマンハッタンのF線にいる自分を想像していたわ。私は地下鉄のドアを無理やり開けなくちゃいけなくて、それからおどおどして笑いながら「え、何かあったんですか?」って聞いたの。みんな思わず笑って、誰かに「ちょっと前に車両から降りるように指示されたんだよ」と言われたの。私は完全に現実世界のことを忘れていたのよ、なぜなら、私の頭の中ではあなたが私をマンハッタンの地下鉄に連れていっちゃってわけだから。

エリオット:(笑)、すごい話だね!ほら歌の中にありえるでしょ!

PC: あなたは自分の言葉を表現する手法でもって、いつも力強いヴィジュアルを想起させるわ。ということはあなたは目で見える光景にはうとくて、画像を考えているっていうこと?

エリオット:それをすごくやっていると思う。僕は頭の中でその画像を見ている。そうやって歌詞を書く。大抵の場合、僕が歌詞を書いているとき、頭では画像を描いているんだ。うーん、一つの画像っていうわけではないな、その様々な画像が束になっている。

PC: 「picture」という単語もあなたの歌の中によく出てくるわよね。

エリオット:僕が「picture」というときは、僕の頭の中の画像のことを言ってるんだ。

PC:様々なイメージが合わさって、歌の中に収まっているかがわかるわ。『Bottle up and explode!』ではあなたは星を見てることを語っているけど、それを赤、白、青色と表現している。

エリオット:うん、実をいうと、僕は花火が散っていることを考えていたんだ。それはお祝いかもしれない、でも一方では何か悪いことなのかもしれない。僕はただ事物の間を関連づけようとしている。僕はもう完結したストーリーを語ることにはあまり興味がないんだー歌が抽象的な映画みたいなほうが好きなんだ。

PC: 直線的なアプローチではなく、もうちょっと右脳的な作用があるほうがいいのね。

エリオット:そうだね。より夢のような。

PC: 曲により強力なスタミナを与えられるかもしれないわよね。曲を繰り返し聞いたとき、聞いた人なりにその曲を想像して、あなたが本当に意図したものかどうかが定かではなくてってしまう。

エリオット:うん、想像力を働かさない限り曲自体が完璧にならない。音楽はそうなるべきなんだ。僕の好きな曲の多くは、僕が頭の中で終わらせないと完全にならない。

PC: 例えば?

エリオット: ビートルズの『Strawberry Fields』とかね。結びついたイメージの集まりみたいだよね、曲が「OK、さあ、何かが起きました、それは何故か」なんて言ってない。僕は今Strawberry Fields』みたいな感じで書こうとしている。「何かが起きた、それは何故」みたいなのはあまりに一方的で、一方的な曲に本当に共感できるのは、僕が今感じているのと全く同じように、聞く人が感じるときだけになってしまうから。

PC:Strawberry Fields』、、、なるほど、『Magical Mystery Tour』ね。

エリオット:うん。それも僕のお気に入りだ。そんな感じのレコードが好きなんだ、メロディがいっぱいで、クールで秘密めいた。

PC: 『XO』に入ってる『Oh Well, OK』を聞いていた時、ビートルズの『Fool On the Hill』のフィーリングを思い出したわ。

エリオット:ええ、本当に?ありがとう。

PC: 曲作りをしているとき、インスピレーションに満たされるのはどんな瞬間?

エリオット:自分自身に驚くとき。それが一番だ。それは だから僕は座り込んで、特定の事についての曲を書こうとしない。それをしてしまうと、もう自分がすでに書けるとわかっている曲を書く羽目になる。もしかしたらいい曲かもしれないしダメな曲かもしれない、でも僕には間違いなくつまらない曲だ、なぜならもうすでに書けることがわかっているから。僕にとって一番エキサイティングなのは僕を驚かせたり、普段は書かないようなことを不意に思いつくことなんだ。

PC: 歌詞ノートは持ってるの?

エリオット:たいていは僕は歌詞と曲の断片がいつも頭の中にいっぱいあるんだ、ふつうは、20曲から30曲くらいかな。時間がたつにつれてそのうちのいくつかは曲になるんだけど、忘れちゃったり、何か月間もうろついていたりするのもある。僕はバーでナプキンとかに書いたりするけど、後で見直したりはしない。もし、記憶に残るようなものなら、多分覚えているだろうから。[注:スミスはブルックリンの住まいの近くのバーと私の家からほんの2ブロック程にあるマンハッタン・イーストビレッジのルナ ラウンジバーで『XO』全体の曲を書いた。他の雑誌で彼がこの事を話すまで、私は何故そこで彼を頻繁に見かけるかすごく知りたかった。]

PC: あなたは自己逃避のためにニューヨークに行きたいと言ってたわよね、でも自分は自分でしかないことはわかっていると。ニューヨーク、今はブルックリンよね!(両者笑)あなたはずっとあなたのままかしら?

エリオット:そうだね(笑)っていうか、まだ1、2週間しかここにいないから、まだ自分の住んでいるところについて考えても意味がないんだけど。このレコードのためにあちこち旅行していたし。

PC:エリオット、インタビューをありがとう。そして体に気をつけて!私たちは『Amity』の曲にある歌詞みたいにあなたの事を思っているわ。あなたの音楽は本当に美しいんだもの、「You Make My World Rock!

エリオット:(笑)ありがとう!