Monday 22 June 2020

大好きなミュージシャンについて歌ってみた - Punisher, Phoebe Bridgers


「もし彼の音楽が好きでない人がいたら、その人と意見が一致することは何もないと思う。」言い切りましたね!

エリオット・スミスの影響を受けた次世代ミュージシャンは本当にたくさんいるのですが、今回はその中の一人であり、USインディーシーンで活躍する25歳のシンガーソングライター、フィービー・ブリジャーズの新作『Punisher』のタイトルトラックを紹介しようと思います。エリオットのスーパーファンを公言してはばからない彼女らしさがいっぱい詰まった曲になっています。

というのも、この曲はエリオット・スミスとおしゃべりしているのを想像して書いたらしいんですよね。タイトルの「パニッシャー」の意味は、本来は罰を与える人という意味ですが、ミュージシャン間でよく使われる用語で「コンサートが終わってもグッズ売り場でずっと居残っているような、お目当てのミュージシャンに熱狂的になりすぎるファンたち」を指すそうです。彼女自身がエリオットの「punisher」になった視点と、また今や自分も彼と同じような立場であることの困惑が入り混じったような歌詞になっていると思います。初期のエリオット作品にみられるような、語り手の夜をさまようような一人歩きから始まって、ところどころに散りばめられていく歌詞へのオマージュがオタクっぽいです。

また、この歌からちょっと引いてしまうようなファンにもとても優しかったエリオットへの尽きることのない尊敬や、憧れが伝わってきます。コンサートのチケットが手に入らなかったファンと偶然バーで遭遇すれば、当日のゲストリストに加えてくれたり、ライブの後、遅くなって家に帰れなくなったファンにギター教えてくれたりと、彼にはいろんな逸話があるんですよね。

Punisher

[Verse 1]
When the speed kicks in
I go to the store for nothing
And walk right by
The house where you lived with Snow White
I wonder if she ever thought
The storybook tiles on the roof were too much
But from the window, it's not a bad show
If your favourite thing's Dianetics or stucco

せわしなくなってくると
あてもなくお店に行くの
あなたが白雪姫と住んだ家のそばを通り過ぎる
彼女はおとぎ話そっくりの屋根瓦は
やりすぎだと思ってるんじゃないかなって
もしあなたがディアネティクスやスタッコ塗装が好きだったら
窓からは悪い眺めではないでしょうけれど

[Pre-Chorus]

The drugstores are open all night
The only real reason I moved to the east side
I love a good place to hide in plain sight
ドラッグストアは夜通し開いている

イーストサイドに引っ越してきたたったひとつの本当の理由は
隠れているようで実はすぐ見つかるような
素敵な場所が好きだから

[Chorus]
What if I told you
I feel like I know you?
But we never met

もし私があなたを知ってる気がするのって言ったとしたら?
でも私たちは会ったこともない

[Verse 2]

And here, everyone knows you're the way to my heart
Hear so many stories of you at the bar
Most times, alone, and some, looking your worst
But never not sweet to the trust funds and punishers
ここではあなたが私の心の掴んでいることがみんなにばれているの

バーではたくさんのあなたの話を聞いたわ
ほとんどは独りで、時折最悪のあなたを見たって
でも あなたの追っかけやグッズ売り場に居残るファンたちに
決して冷たくすることはなかったと

[Pre-Chorus]
Man, I wish that I could say the same
I swear I'm not angry, that's just my face
A copycat killer with a chemical cut
Either I'm careless or I wanna get caught
Who I'm not
ああ、私にも同じことが言えたらいいのに

私は怒ってないと誓うわ、ただ私の顔のせいよ
ケミカルカットの模倣犯
気にも留めない人になりたいのか、見つけて欲しいのか、
どっちでもない私

[Chorus]
What if I told you
I feel like I know you?
But we never met
It's for the best

もし私があなたを知ってる気がするのって言ったとしたら?
でも私たちは会ったこともない
そのほうが良かったのかも

[Outro]
I can't open my mouth and forget how to talk
'Cause even if I could
Wouldn't know where to start
Wouldn't know when to stop

私は口を開けられないわ、どうやって話したらいいか忘れてしまう
だってもしできたとしても
どこから始めて
いつ止めたららいいのか
きっとわからないから


訳注:
Speed kicks in (せわしなくと訳しましたが、いい訳がわかりません。彼女のインタビューではライブのスケジュールが入ってくると隙間時間によく何にも買わないのにお店に行くって話してたのでそういうことかも。もちろん、Speed Trialからの引用

Snow White : エリオットがLos Feliz(イーストLA)で借りていた風変りなコテージの名前。白雪姫に出てくる家そっくりに作られている。1920年から40年にかけてウォルト・ディズニーのスタジオがすぐ近くにあったらしい。その後、エリオットは同じくイーストLAのSilver Lakeに引っ越している。

Dianeticsサイエントロジーが説く理念のこと?Snow Whiteコテージの近くには巨大な青いサイエントロジーの建物がある。

stucco: LAでよくみられる化粧漆喰仕上げの外壁のこと。スタッコ

the east side: Phoebeも生前のスミスと同じくSilver Lakeに住んでいるらしい

I feel like I know you? But we never metWaltz #2に出てくる"I'm never gonna know you now, but I'm gonna love you anyhow" (君を知ることはないけど、君を愛しているよ)の歌詞からかな。

trust funds  punisher と同じように、スーパーファンでなおかつ追っかけができるほど経済的に余裕のある人たちのことを指す?もしくは彼に色々と出資してくれた人のこと?

A copycat killer with a chemical cut;  ヘアカラーのし過ぎで髪の地肌が痛みきっていたり、他人のミュージシャンの手法(例えばエリオットが良く使う歌声の二重録音など)をまねたりと語り手が自分のことをユーモアたっぷりに形容している。