Tuesday, 1 January 2019

エリオットとカバーソング (1) / Beatles, John Lennon


エリオット・スミスが2001年の1月号のスピンマガジンに寄せた文章です。ジョン・レノンの30年目の命日にちなんで、彼のお気に入りのジョン・レノンの曲について語っています。説明するまでもなく、エリオットが一番影響を受けているバンドはビートルズですが、彼がビートルズについて語るとき、なんだかその熱がこっちにも感染してきそうです。

この頃(2000年?)のエリオットは、やっぱりドラッグをしていた頃でしょうか。。。なんとなく文章の端々にそういったことが見え隠れしています。この先に起こることを予見していたような感じです。エリオットはカバーをするとき、ただ好きだからという理由だけではなく、彼の気持ちを代弁してくれるような「意味」のある曲をその時々に演奏していたように思えます。

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お腹の中で音楽修業

1980年、僕は友達とちょうどギターを教え合い始めていた。僕は11才で、「ジュリア」や「セクシーセイディ」といったビートルズの曲にすごく入れ込んでいた。クールで、万華鏡のように刻々と変化するコード進行に。僕はその全てを解明しようとして完全にギター漬けになっていて、それが徐々に起こりかけていた頃、狂気の男がその道先案内人を撃ち殺した。最初、学校の子たちは、まるででっち上げのように反応した。当時、現実あったことのような気がしなくて、正直言って、ジョン・レノンが死んでしまったことをあまり信じれなかった。彼がいなくなったと思うには、彼の音楽はあまりに生命感に満ちていた。どういうわけか、今彼を思うとき、僕は大概「気難しくて怖い」時期、アビーロードの頃の様子や口調が目に浮かぶ。絶対に彼自身トリップしていたころだ。変化することを恐れない人たちを子供の頃に見るのはすごいことだ。僕は主にジョンの音楽的な面に惹かれていたけれど、ジョンの殺害は僕の心の中で、名声から彼の音楽を更に切り離すことになった。僕はどのように彼の曲を演奏するかを見出すことに立ち返り、まるで何も起こらなかったかのように振る舞った。僕の家族はビートルズファンで、僕が生まれる前に「サージェント・ペパーズ」をかけてくれたらしい。中学では、僕は「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」が多分一番のお気に入りだった。もちろん、今はもっと沢山の好きな曲があるけれど、その中の多くはやっぱりレノンの曲だ。例えば、


ファンをステージに招いてみんなで歌ったライブ
“I’m Only Sleeping”
「アイム・オンリー・スリーピング」
ここに挙げるほとんどの曲は、一人で放っていて欲しいとか、またはこの曲と同じくらい事を荒立てずに止めて欲しいというものだ。敵意をむき出しにせず、自分の内にこもる自由を表現したり、守ったりできるのは格好いい。この曲なら簡単なことのように思える。キックドラムで重たく前に押し出される代わりに、まるでその衝動が勢いで引き出されるような感じも好きだ。

“Tomorrow Never Knows”
「トゥモロー・ネバー・ノウズ」
一行目(“Turn off your mind, relax, and float downstream”/思考を停止して 力を抜いて 流れに身を任せて)が全てを表している。これもまた、彼は外的世界に対して戦わずに内面の状態をしっかり保つことについて表現しているみたいだ。僕にとって一番レノンのすごいところは、ひどく傷ついた幼少期や馬鹿げた名声にもかかわらず、前向きに自分のアイディンティティを維持できたところなんだ。一方で、


この頃ライブのリハーサルではビートルズのレパートリーばっかり演奏していたらしい


“Yer Blues”
「ヤー・ブルース」
時々は異常な精神状態に陥いることだってある。おそらくそれはカタルシス的だ。絶対に避けられない。残念なことに、たいてい人は自分自身が壊れていくのを隠したがるものだけど。だからこそ多分この曲みたいなのを聞くと安心できるんだ、少なくても僕にとっては。(“Feel so suicidal, even hate my rock’n’roll!” 死んでしまいたい気持ちなんだ 僕のロックンロールでさえ嫌いになった)こういった気持ちはどうしても頭をもたげてくるものだから、一度に全部爆発させたっていいはずだ。



よくカバーしていた曲。口笛だれかやってくれない?と聴衆に問いかけています。

“Cold Turkey” and “Jealous Guy”
「コールド・ターキー」、「ジェラス・ガイ」
この正直さはリスキーだけど、もちろん素晴らしいアイディアだ。感傷的なのかそれとも勇気があるのか。もしくはその両方だ。彼は一か八かの勝負に出て勝った。他の人だってこんなふうにいつも曲を書くべきだよ。レノンはどんなどんなことも歌に出来た。彼はまた、

“I Am the Walrus”
「アイ・アム・ザ・ウォーラス」
も書いた。陰鬱で、複雑で、おかしくて、人気があって、しかもロックしている。「グーグーグジョブ」のフレーズがある。歌詞があちこち散らばっている。想像力を掻き立ててくれるから僕はこんな歌が好きだ。(歌詞が)まとまってることはいいことに違いないけれど、面白い歌詞を判断する基準にはならない。音質的には、この歌はまさに収監所から逃げて来た人から生まれた感じがするんだ。

“Across the Universe”
「アクロス・ザ・ユニバース」
僕にとっては、彼の人生をとりまく文化や政治的解釈全体をアーチ状に覆ってしまうような流動的かつ音楽的な歌だ。本当にクールな歌は時として、夢を生み出し、現実と入れ替わる。おそらくもっと良くなるために。

2 comments:

  1. エリオットのカバーはどれも原曲に忠実なのに心に響く良いものばかりだと思ってます。
    その中でもジョンやジョージのカバーは、ビートルズに精神面でも影響を受けたのかを伺い知れる感じがします

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    1. いつもコメントありがとうございます。私も本当にそう思います。選曲のセンスもすごい。リスペクトして歌ってるのが伝わってくるから、原曲の良さにも改めて気づかせてもらえますよね。

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