Tuesday, 25 December 2018

罪の意識?自己嫌悪?Clementine



Clementine 
クレメンタイン

They’re waking you up to close the bar
The street’s wet you can tell by the sound of the cars
The bartender’s singing Clementine
While he’s turning around the open sign
Dreadful sorry Clementine


バーを閉めるため君は起こされる
通りが雨に濡れている 車の音でわかるんだ
バーテンダーはクレメンタインの歌を歌っている
営業中の看板を裏返しながら
とても悲しいよ クレメンタイン

Though you’re still her man
It seems a long time gone
Maybe the whole thing’s wrong
What if she thinks so but just didn’t say so?


君はまだ彼女の男だけれど
長い時間が過ぎてしまったみたいだ
何もかもが間違っていたのかもしれない
彼女がそう思ってるとして、でも口に出さなかっただけだとしたら?

You drank yourself into slo-mo
Made an angel in the snow
Anything to pass the time
And keep that song out of your mind
Oh my darling
Oh my darling
Oh my darling Clementine
Dreadful sorry Clementine


意識が朦朧になるまで酔いつぶれる
雪の中の天使を描いた
気を紛らわすことならなんでも
そしてその歌のことを考えまいと
愛しい
愛しい
愛しいクレメンタイン
とても悲しいよ クレメンタイン

クレメンタインはセルフタイトルアルバムの三曲目に収録されている曲です。歌の中の語り手はバーで飲みふけっている。閉店間際、外は雨が降っていて、バーテンは「Oh my darling, Clementine(アメリカ西部開拓時代のフォークバラード)」を歌っている。男は泥酔しているが、クレメンタインの歌がどうしても頭から離れない。

想像ですが、当時のガールフレンドと別れたことへの罪の意識みたいなものを歌ったんじゃないかと思います。(まあ、エリオットのことなんでそのことだけを歌ったんじゃないんでしょうが・・・)

まず、気になるのはバー「Open」の看板が「Closed」にひっくりかえるんですよね。語り手は、お酒の力を借りて自分の殻の中にこもってしまう感じがします。そして外は雨。車のライトが雨に滲んでいる感じや、濡れたタイヤが道路を走る音が浮かんできます。(The street’s wet you can tell by the sound of the cars)あまりに上手いので、この一行が大好きだというファンが多いのも納得です。また外の雨は、彼の悲しみや陰鬱さを暗示しているようです。

バーテンダーが歌う(実際歌っているわけではなく、ここではメタファーとしてこの歌が歌われてると思うのですが)「Oh my darling, Clementine」は、西部開拓時代に金を求めてカルフォルニアに殺到したある炭鉱夫(フォーティーナイナーズ)の娘が、仕事中に川に落ちて溺れてしまう。そばにいた男は泳げないので彼女を助けられなかったという悲劇のストーリーです。エリオットはよく曲の中に他の「曲」(しばしば古いフォークソング)を引用して1曲の意味をもっと膨らしたり、その曲の意味の手がかりをほのめかしたする手法(他にもSweet Adeline, Waltz #2 などをよく使っています。絵画を例にたとえると、フェルメールの絵画には、沢山の画中画(額縁の中の絵)が存在するのですが、その画に描かれているものが、フェルメールの絵の人物引用の心中を表しているのです。引用歌詞でもある「かわいそうなクレメンタイン(Dreadful Sorry Clementine)」のところで、当時のガールフレンドに「Sorry」と言いたげです。というのも、ヒートマイザーのマネージャーをしていた彼女は、エリオットを説得して「Roman Candle」の録音テープを知り合いのレーベルに送り、彼のソロデビューの足がかりを作ってあげた人なんですよね。結果的に彼女とは別れることになり、ヒートマイザーも空中分解。エリオットは新しい彼女(Angel in the snowがそれを表している?)と付き合い始め、彼のソロのキャリアは見事に花開いていく。でも、彼はずっとずっと苦しみ続けるんです。そういう運命になってしまった自分を悔い続ける。引用歌の「川に溺れる」娘と「酒に溺れる」自分を重ね合わせて自己嫌悪に浸っているともとれますよね。

それでもこの曲のサウンドはどこか暖かな、甘い感じもするんですよね。苦くて甘いエリオット節だなあと思います。

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