Pitselehはイディッシュ語で「little one(かわいいひと・子ども)」を意味し、恋人や子供に愛情をこめて呼ぶときに使われるそうです。他にも英語では、honey とか、sweetieとか色々ありますよね。ヒートマイザー時代のガールフレンド(JJゴンソン)の父親が彼女をそう呼んでいたらしく、エリオットもJJに対して使っていたそうです。というわけで、この曲はその彼女、もしくは他の過去の恋愛/友人関係にインスパイアされてできた曲、という見方ができます。自分を愛してくれる人達へ彼自身の正直な気持ちを伝えているようです。彼らが思う「本当の僕」に恋をしても、僕が知っている「本当の僕」は愛する人を傷つけ、苦しめることしかできない、という複雑な感情が音で伝わります。「But no one deserves it」のところで聞こえるピアノはこのアルバムのハイライトですよね。でもこの歌から聞こえてくるのはそれだけじゃない。
Pitselehは、誰への呼びかけ?
それでは、歌詞に出てくる「The silent kid is looking down the barrel」のsilent kid(kid ってけっこうエリオットの歌詞に出てきます)って誰なんだろう?って考えてみます。エリオット自身を投影しつつ、私には両親の離婚や不仲で翻弄され、本来の子供時代を送れず彷徨っているインナーチャイルドへの呼びかけのような気がします。その子供たちは「声」を持つことができなかった。Looking down the barrel ( of a gun) というのはイディオムで、銃口を覗き込んでいる=起こって欲しくない危険(ここではおそらく死の危険)が迫っていることを示唆するそうです。silent, noise, quietの対比が緊張感を高めています。そして現在の自分がインナーチャイルドに対して、足りないものを埋められるパズルのピースにはなれなかった怒りや自責の念といった感情を伝えています。