Friday 19 October 2018

Plainclothes Man ヒートマイザーラストのビデオ

1996年にリリースされたヒートマイザーのラストアルバム「Mic City Sons」の収録曲「Plainclothes Man」のメロディに心奪われた私ですが、この曲のMVに関しては、youtubeの画像が良くないというのもあって、あんまりじっくり見ていませんでした。

ですが、エリオットが残した「オフィシャル」音楽ビデオを最近すごく見直していて、映像に関しての彼のこだわり方もすごく面白いなあと思っています。あくまでアンチMTVな感じでいくっていう感じが(笑)。

ヒートマイザーの「Plainclothes Man」、エリオットのソロ「Coming Up Roses」、そして「Miss Misery」の3本のMVを担当したのはカリフォルニアで活動するRoss Harrisという人で、当時はベックの写真などを撮っていたそうです。エリオットは事前に用意されたプロットで作り込んだ当世風ビデオは作りたくなかったそうで、即興性を重視した作品になっていると思います。「Coming Up Roses」はSuper8で撮影しているから、エリオットお気に入りの映画だったヴィム・ヴェンダースの「パリ、テキサス」もインスピレーションだったかもしれないと妄想したり。

「Plainclothes Man」は、バンドとしてのMVなので一応ちゃんとクルーがいたり、おおまかなプロットはあったようです。場所はカリフォルニア州のSanta Pauraという街で撮影されています。バンドの演奏はメキシカンディスコで行われたようです。うらぶれた男がボート、窓際にいる女性と警官のカップル、コンビニらしき店で売られているコンドームの箱などを見るたびに、白昼夢の世界に浸るというちょっとシュールな内容で、バンドはビートルズのメンバーが持つ楽器(エリオットはジョンのリッケンバッカー、ニール・ガストはジョージのジャガー、サム・クームスはポールのヘフナー)でビートルズオマージュ風?で演奏、途中にエリオットがニールにタックル入れるシーンは、当時のバンド内の緊張をジョークにしたものらしいです。男が店でお酒を買うシーンの裏側でエリオットがトイレットペーパーを万引きする姿も可笑しいです。

この曲の歌詞は、語り手に執拗につきまとい破壊させようと、夢の中や現実のあちこちに現れる威厳的な存在<Plainclothes man、私服警官>と、語り手の内面の混乱、記憶のフラッシュバック、不信などを語っているような気がします。継父Charlieが投影されているのは確かですが、someone(誰か)という代名詞が使われているので(Someone's gonna get to you And fuck up everything you do、過度にパーソナルな歌詞にならないような感じも受けます。Recover my love of herの「her」は自分を守ってくれなかった母親のことを歌っているのかもしれません。

また、同時に歌詞のyou(お前)の部分を「君」と訳せば、当時の恋人への別れのメッセージのようにも聞こえてきます。こうなると和訳するのがほとんど不可能に思えるのですが、エリオットの歌詞はマルチレイヤード(意味が幾層にも重なる)であるがゆえに、聞く人によって全く解釈が違うものになり、これが彼の作詞家としての評価につながっていると思います。

この曲はエリオットが亡くなった年(2003年)にライブのセットリストによく入っていました。ヒートマイザーのバンドメンバーに対して自分が解散時に辛辣な発言をプレスにしたことを後悔していると生前のインタビューで語っています。きっと和解を求めていたんですよね。

Plainclothes man

お前はみんなの第二の居場所にいる

いつも僕と二人きりになろうとする
自分を抑えられなくなる簡単なやり方だ
それが出来なくたってお前はいつもそこにいる
ウェストサイド鉄道のすぐ向こう側に

でも 今そんなものは必要じゃない

欲しいと思ったことなんて一度たりともない
僕にはお酒だけが本当に必要だった
自分を大丈夫にしてくれたり
言いそうになることを黙っておける何かが

お願いだ、ライトを消してくれないか

ひどく混乱した頭痛なんだ
誰が正しいのかをわかろうとして

シルバーストランドで夢を見ているときに

私服警官のせいで目を覚ます
馬鹿なやつ、小さなお巡り
誰かがやってきては
やることなすことを全部台無しにする

彼は心では不幸なんだ*

誰に対しても面白くないんだ
怒りのキスで君を手に入れられると思っている
自分は何もいらないふりをしておきながら
あいつが血を流すのを君に見せたつけたくて

一緒でいる運命なのに、君は僕のことを気にかけない

僕は絶え間なく擦り減っていく
みんなは僕がまた彼女を愛せるようになるというけれど
僕にはわからない
そう思わないんだ

伝えたいことがあるんだ

今は他に誰もここにいないから
痛い思いから学んだこと
お前のもくろんだ通りではなくても
お前にはわかるだろう

誰かが写真を撮っている

彼らの愛しい子が笑っている写真を
フラッシュが瞬く完璧な瞬間
3から1へと逆に数えた
それはまさにお前がやったこと
全然驚かないよ
僕は忘れない、忘れない、何故僕の夢には色がないってことを

僕は絶え間なく擦り減っていく

みんなは僕がまた彼女を愛せるようになるというけれど
僕にはわからない
僕にはそう思えないんだ

24/10/18追記
加筆・訂正しました。
*赤印の歌詞の原文は聞き取りにくいらしく、
He's so unhappy inside 
Some European son (とあるヨーロッパの息子は)
He's serious with everyone 
→ He's furious with everyone(誰に対しても腹を立てているんだ)
と聞こえるようです。確かに。「European Son」はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲名からの引用ですが、紫色の歌詞のほうが歌詞として意味が通るかもしれません。どちらにしてもあんまりちゃんと聞こえないようにエリオットはゴニャゴニャと歌っている気がするんですが・・・


No comments:

Post a Comment