Wednesday, 15 April 2020

エリオット・スミス プレイリスト(10)Clampdown / The Clash




ーあなたのオールタイムヒーローは誰?
ーハリー・ディーン・スタントン(俳優)。一つには彼は実在しているように見えることなんだ。他にはレッドベリー。そしてジョー・ストラマー。数えきれない程いるよ。

Sunday, 12 April 2020

ブレた写真のようーCupid's trick


イギリスではロックダウンが始まって一ヶ月が経ちました。交通や人々の行きかいがぐっと減り、春の訪れがもたらす木々の変化や鳥の鳴き声にいつもより敏感になっている気がします。静けさの中で時折聞こえてくる救急車の音がいつもと違う日常を伝えているようです。

さて、今回はCupid's Trickについて。まずは1998年9月のインタビューから。

インタビュアー:なぜ(Either/Orの)ライナーノーツにはCupid's Trickの歌詞がないの?

ES:だってあまりいい歌詞じゃないから(笑)今振り返ってみるとどうしてその歌詞を書いたか思い出せないんだ。その時の状態では辻褄があっていたんだけど、あとになると全くそうじゃなかった。歌詞を載せてもいないんだ、なぜならこの曲は歌詞というよりかは、音のほうに重点が置かれているし。歌詞をいろいろと変えてみて、もっと意味のあるものにしようとしたんだけど、やるだけ無駄だった。で、そのままにしたんだ。

インタビュアー:コーラスのところなんて歌ってるの?

ES: だから歌詞を載せてないんだって(笑)

インタビュアー:'sugar lift me up' とか'sugar なんとか?

ES: そうだね、でも言えないよ、あまりにも馬鹿げていて。それで何を意味するかなんてまったくわからないよ。あのときは完璧に意味があったんだけど、今となっては誰にも知られたくないんだ


というわけで、Cupid's Trickちゃんとした歌詞はエリオット当人しか知らないはずで、真相は藪の中(笑)ファンが憶測する中で、まあ、こんな風に聞こえる(だろう)という歌詞を載せてみます。

彼の歌のなかでも1,2を争うロックなキラーチューンだと思うのですが、タイトルが『キューピッドのいたずら』と
甘い感じです。キューピッドは神話では欲望や愛の神として描かれているから、まあラブソングかなあと思うのですが、キューピッドは矢を持っていて人を射るから、ドラッグの暗喩もあるかもしれません。'Shake down'や’deal'といったビジネス用語も含まれています。不穏で静かなイントロからやがてノイジーなギターのリフへと繋がっていく過程で、衝動的かつ挑戦的なエネルギーや感情が一気にサウンドに溢れ出ているようです。

コーラスの部分が不明瞭でネイティブの人さえも聞き取れない謎の歌詞ですが、

1.もし、Should’ve lit me up, it’s my lieだったとしたら、
「僕を照らしてくれるはずだった。ぼくのウソなんだ」と後悔や怒りを表している。

2. もし、Sugar lick me up, 
it’s my lie だったとしたら、               
(訳詞はやめときますが)、セクシュアルなニュアンスを含んでいるエリオットには珍しい歌詞になります。この説が有力だとしたら、なぜ彼が歌詞がライナーノーツに載せるのを拒んだのか説明がつきます。

3.もし、Shoot me up, it’s my lieだったとしたら.
ドラッグへの衝動というふうになりますよね。


何度聞いてもよくわからないので本当に重要ではないのか、いや、これはスミスさんのこと、意識的にしたことに違いないのでは。

例えば写真でいうとピントがぶれている状態のようです。何が映っているかはっきりとわからないけど、雰囲気があるモノクロ写真のように想像力を掻き立てられる。

語り手の衝動(A stupid kick that makes me real - 愚かな衝動が僕が生きていることを感じさせる)へと駆り立てられるときの勢い、あとを引きずるような感情Reachin’ around for the hands of the clock - 時計の針に手を伸ばす=時間を巻き戻したい)といった心の中の混沌を見事にサウンドにしていると思うのです。

彼はErik Pedersen とのインタビューでAnglesの曲について下記のように語っています。もちろんCupid's Trickにも当てはまるのではないでしょうか。

他の誰かがある曲について考えることと僕のやっていることと特別な繋がりはないんだ。
『Angels』のように、街についての歌だと考える人もいるし、レコード業界についてとか、ある女の子についての歌だと思う人もいる。僕が曲を書くときは、Feeling (感覚、感情)について書いてるんだ。街や、人や、状況から感じとるかもしれないようなことなんだけど。僕にとって大きな喜びは、何か一つのことに限定された歌詞を書くことではなく、その感情そのものについて書こうとすることなんだ。何がその感情をもたらしたことかは重要じゃない。時によって人はそういった感情を抱く。少なくとも僕は感じるんだ。


Cupid's Trick 

She’s shaking down
I’m absent and numb from shock
Reachin’ around for the
Hands of the clock

Should’ve lied ( Sugar lied?

Lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie ( Sugar lick me up?, Sugar lift me up? or Shoot me up?
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up

Cupid’s trick comes
Down to shake and deal
A stupid kick that
Makes me real

Should’ve lied

Lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up

She’s shaking down
It’s never over and done
So kick me, cane me
And I’ll know

Why

Lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up, it’s my lie
Should’ve lit me up